2020/11/26 〈報告〉ワークルール出前授業 生徒たちの作文
阿武野高校出前授業 感想まとめ
編集者雑感
今回の出前授業を行う前からなんとなくそんな気はしていたし、実際に話を聞いている高校生を見ていてもそうでしたが、関心なさそうに聞いている生徒が一定数いるのはある程度は仕方ないかな、と思っていました。「自分が18歳の頃、労働問題についてどれぐらい意識していたか?」と思い出してみても、長時間労働でこき使われることなんて、どこか自分とは関係のない世界で起こっていることのように考えていたような気がします。担当の先生も、事前学習では予想よりもずっと反応が悪くて落ち込んだ、と言っていました。
ところが、実際に今回の授業を行った後の感想を読むと、思いの外反応が良かった、とも担当の先生から。12月号の通信でも書かせていただいた、「他人事として考えてほしくない」という自分のメッセージもある程度は伝わったかな、とも思います。また、阿武野高校といえば20年ほど前から自立支援コースがあることが地域では知られているので、権利や共生といったテーマについて意識している生徒がそれなりに多そうなことも、良い反応があったことに繋がっているのではないかと思われます。
抜粋させていただいたような良い反応は母数からすると少数ですが、それでも組合のことを知ってもらえたこと、将来仕事で悩んだ時に「組合に相談する」という選択肢が広まったというのは手応えとして大きいと思います。労働者の権利やそれを保護する法律について、中学・高校の公民科で一応習ってはいても、生きた知識として聞く機会は早々ありません。総合学習や職業体験で聞く話も、仕事で成功した人の話ばかり。こんな仕事がしたい、そのためにはここの大学や専門学校に行って、この資格を取って実習をして…といった、一本道で成功するためのライフスケジュールだけを学ぶことではなく、困った時、失敗した時にどうするのかについて授業で扱うのも大切では。今回の授業内容を振り返ると、自分が若い頃にもっとこんな授業を受けたかった、と思います。
自分は仕事で辛い思いをずっとしてきたからこそ、「できる範囲で世の中を良くするお手伝いがしたい」という思いでユニオンの仕事をさせていただいていますが、今回のように若い世代の意識が少しでも変わってくれるのは喜ばしいことです。一人で悩まなくてもいい、助けを求めてもいい、自己責任に縛られなくてもいい、と思ってくれたら、若い世代の自殺率も少しは下がるのではないでしょうか。選挙権が18歳に引き下げられて数年が経ちますが、若い世代の政治的無関心が目立ち、「この国の未来は暗い!」等と嘆かわしい気持ちになることもしばしば。某ガースーが殊更に「自助」を強調している状勢に少しでも疑問を持ってほしいなと、小泉・竹中改革による「痛み」から発生した「自己責任」を散々押し付けられた世代としては切に思います。
〈作文から〉
自分の事例から、自分のこととして
・過去に給与の未払いがあり労基署に相談して助かった経験がある。もっと今の高校生が知っておくべき話だと思う。
・高校生なのに22時以降に働いたことや、8時間を超えても残業代が出ないことがあり、おかしいと思うことが多かったから話を聞けて良かった。
・パワハラを受けているので、そろそろ辞めようと思っていたところでこの話を聞けて助かった。
・今まで何とも思っていなかったこと、我慢していたことがもしかしたら不当な扱いだったのかもしれない。
・自分は何も考えずにバイトをしていたので、ブラックなバイトなんて考えたことがなかった。これから仕事を探すときには気を付けたい。
・今まで損をしてきたところがある。労働のルールを知ることによって、これからは得になるように繋げたい。
・何が違法で、何が違法でないか知ることができてよかったが、自分が働いている身分だったらわからないだろうな、と思った。
・来年から働くところは残業が多いと聞いているから心配だ。残業代は出るらしいけど…。
世の中おかしいのでは?
・父は残業が多く、22時過ぎに帰ってくることが多い。小さい頃からその姿を見ておかしいと思っていた。行動を起こすことは簡単ではないし、怖いと思う。父はこのまま働き続けると思うが、私は行動しなければ変わるものも変わらないと今回の講演で気付けたので、いつか仕事に就いたとき「助けて」という声を上げられるように自分でも調べてみようと思う。
・日本は朝礼や集合など始めの時間は厳しいのに終了の時間はとてもルーズで奴隷のように働かせる。自分がそのような場合になっても、一人で抱え込まず助けを求めることが大切だとわかった。
・医療従事者、トラックの運転手が「過労死防止ライン」に入っていないことがわかった。改善すべき点では。
・月340時間働かされた運転手さんの話を重く受け止めると同時におかしいと思った。
・時間外労働があるのは当たり前だと思っていたが、自分の認識が間違っていた。
・今まで深く考えたことがなかったような労働問題は自分にも起こり得ることだと思った。世の中は生き辛い。
組合活動について理解できた
・自分が働いたときに、賃金、待遇などに異変を感じる力、相談できる力を身につけたい。会社にある労働組合は正社員しか加入できなくても、地域にある組合は非正規でも加入できることを念頭に置いておこうと思った。
・ちゃんと相談すれば過去の損害であっても取り戻せること、個人でも大手企業相手に訴えることができると学べた。
・社長や上司が仕事では一番えらいと思っていたが、対等な立場で話し合う機会が受けられると知ってよかった。
・過重労働の事例や、そのような状態から新たなスタートを切れた方の実際の話を聞けて貴重な経験になった。
・当初は労働組合のない職場を選んでいたが、親と相談して組合のある職場に決めたので、組合活動について学べてよかった。
・正社員じゃなくても相談できる場所があるとわかってよかった。
相談したい、行動したい!
・組合などの相談できる場所があることによって安心して働けると思った。
・自分が不当な扱いを受けてしまったときに泣き寝入りせず、労働組合等を積極的に利用して、穏やかに仕事ができる環境を自分で作っていくことが重要だと思った。
・仕事の悩みは親や友達に相談するのも大事だと思うが、誰にも言えない、言いにくいことは組合に相談しようと思った。
・労働問題についてあまり考えてこなかったが、自分が当事者になる可能性が高いことを知った。知り合いがそのような状態になったときにも組合に相談することを勧めたいと思った。
・自分は4月から仕事を始めるが、考えすぎたり頑張りすぎてしまうところがあるので、鬱になったり死にたくなることがあるのかと不安。会社に対して変だと思うことがあったら労働組合に相談したい。
・自分だったら過労死なんて嫌だ。不当な扱いをされたら相談したい。
・言い出すのは大変だし勇気がいると思うが、自分の中に閉じ込めていて取り返しのつかないことになる前に助けを求めたい。
・社会に出たら大人だから自立しないといけない、苦しくても頑張らないといけないと思っていたが、人に頼ってもいい、助けてくれる人がいるんだな、と思った。
・自分のことは自分で守るために、権利やルールについて理解していきたい。
(「相談できる場所があると知ってよかった」、「困ったことがあれば組合に相談したい」「自分や知り合いが被害に遭えば行動したい」等、類似の感想他20人ほど)
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