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自治体の会計年度任用職員 処遇改善が急務

2021/12/7   機関紙聯合ニュース 特信版記事

住民の生活に密着した行政の足元で、貧困と隣り合わせの働き方が広がり、改善の兆しは今も見えません。多発する自然災害や、新型コロナウイルス感染拡大に際しても、人々の暮らしを支え続ける地方自治体。その働き手の処遇改善が急務です。

 

名ばかりだった「処遇改善」

 自治体の会計年度任用職員の2020年の就労年収は、フルタイム勤務で年収250万円未満が78・3%――。当事者や研究者でつくる団体が今年7月、全国約1300人から回答を得た緊急インターネットアンケートの結果です。この驚きのニュースに波紋が広がりました。

 会計年度任用職員制度は20年4月に開始。自治体の非正規職員のほとんどが移行しています。

 事務、保育士、相談員、支援員、保健師などあらゆる職種に及ぶとともに、自治体の基幹業務を担っています。その4分の3が女性です。

 近年、低賃金・不安定雇用から「官製ワーキングプア」とも呼ばれ、その改善が求められていました。政府による「働き方改革」が進められた頃、国はようやく重い腰を上げ、「処遇改善」を掲げて同制度を導入しました。

 しかし、このアンケートを行った「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」の調査では、処遇改善とは名ばかりの実情が浮き彫りとなりました。

 

賞与の代わりに給与削減

 制度開始によって期末手当(賞与)の支給に道が開かれましたが、賞与が支給されてもその分を月額給与から減らされるということが、まるで判で押したかのように、全国各地で行われたのです。

 中には「交通費を支給するから」と月額給与を削られたという声や、「(別の制度から)会計年度任用職員制度に置き換えるために年収が100万円減額になると言われた」という、理不尽な対応への怒りの声も寄せられています。

 はむねっとでは11月、こうした実態を政府に伝え、給与などの均等待遇を要請しました。

 

雇用不安で物言えぬ立場に

 雇用不安も強まっています。自治体の1年ごとの任用が、より厳格に適用されるようになったためです。

 職務に精通するベテランにも毎年試用期間が設けられ、履歴書の提出を求められるようになったといいます。「更新は2回まで。3年目は公募」と、働き続けるには公募試験を課すこともあります。

 職務にやりがいを感じ働き続けたいと思うほど、毎年の契約更新時は不安。はむねっとの追跡調査では「(上司の)印象を悪くしないように腐心。さまざまなことを断れない」「異議申し立てなどはしにくい」と、うっ屈した思いを紹介しています。

 

住民の安心・安全が危ない

 処遇改善が進まない大本には、自治体運営の財源を抑制する、国からの地方交付税削減があります。その結果、94年から約20年間で正職員が約50万人減らされて、非正規職員が約3倍に増えました。

 多発する自然災害や新型コロナ感染拡大の際にも、人々の暮らしを支え続ける自治体職員。劣悪な処遇の放置は、住民の生活の安心・安全を掘り崩すことにもつながります。処遇の改善が急がれます。