アルバイトにも「休業支援金・休業手当」を支給

2020/10/23 東京新聞

厚生労働省、コロナ禍で休業を認めなかった中小企業の許可がなくても、「休業支援金・休業手当」を支給することを明らかしました。

 

〈東京新聞2020-10-23

新型コロナウイルス感染拡大の影響で仕事が休みとなり、収入が途絶えた人に支給される国の「休業支援金・給付金」の利用が伸び悩んでいる問題で、厚生労働省は支給拡大に向けた新たな運用基準をつくる方針を固めた。受給の前提となる「会社の協力」が得られない場合でも、休業前の勤務実態などを踏まえ、審査に当たる労働局が支給を認める方向だ。早ければ月内にも具体策を公表する。

 休業支援金の受給には、会社の指示で休んだことなどを会社側に認めてもらう必要がある。しかし、会社側が協力を拒否、受給できない事例が相次いでいた。

 相談例で多いのが、ホテルの配膳やバスガイドなど、仕事があるときだけ短期の雇用契約を結ぶ「日々雇用」の非正規労働者や、勤務日時が固定されていない「シフト制」の飲食店などで働くアルバイト店員らだ。会社側が「勤務のシフトを組んでいない日だったので、休業ではない」などと主張し協力を拒否するケースが後を絶たない。

 実際はこうした雇用形態でも支給対象になる。厚労省は「制度への誤解が多い」(幹部)として、新基準では、休業前に一定期間の労働実績などが確認できれば、会社が休業と認めなくても支給を認める方向だ。

 また、緊急事態宣言で勤務先が入居する商業施設などが閉鎖され、休みを余儀なくされたケースも救済できるように検討する。

 休業支援金は、休業手当をもらえない中小企業の労働者を救済する目的で導入された。7月から受け付けが始まったが、5442億円の予算に対して支給率は今月15日時点で4.6%(250億円)にとどまる。(岸本拓也)

非正規やアルバイト、悲痛な声が国動かした 「救済に向けて一歩進む」

 「救済に向けて一歩進んだ印象だ」。個人加入できる労働組合「首都圏青年ユニオン」の原田仁希執行委員長は22日、厚労省が検討する休業支援金の新たな運用基準を歓迎した。

 同ユニオンはこの日、厚労省に休業支援金の運用改善を求める要請書を提出。厚労省の担当者は「国会を含め、さまざまな意見を頂き、省内でも対応する必要があると議論が高まった」と改善の必要性を認めた。

 国を動かしたのは当事者たちの悲痛な声。この日は要請に合わせて東京都内の居酒屋で働く20代のアルバイト女性2人が、支援金の申請協力を会社に拒まれている実情を説明。1人は「正社員は手当を受け取っているが、バイトは同じ仕事でも何ももらえない。改善してほしい」と訴えた。

 同日開かれた立憲民主党など野党共同会派の部会では、ホテルでアルバイトをする大学4年の女子学生2人が出席。2人は3年以上勤務していたにもかかわらず「日々雇用」を理由に、ホテル側から休業手当はおろか、休業支援金の協力を拒否されたという。

 一方、別のホテルで働く学生バイトには休業支援金が支給された事例が紹介され、部会では「経営者の意思によって差がつくのは社会正義に反する」(長妻昭衆院議員)との声が出た。

 

 厚労省が新たに示す運用基準は「支給格差」を縮める一歩となる可能性がある。しかし、具体策はまだ示されておらず、救済が広がるかは予断を許さない。