維新政治と大阪都構想 大阪が進むべき別の道を考える

2020/2/27 維新政治と大阪都構想 大阪が進むべき別の道を考える  中山 徹さん(奈良女子大学)   ※どないネットまとめ

維新政治の特徴との関係で、都構想がどのような位置にあるのか?

 

1.維新政治の特徴

① 呼び込み型の経済対策

・大阪経済活性化のための維新の考え方は非常にシンプル。大阪の経済低迷の原因を考えて対策するのではなく、とにかく大阪経済活性化に役立つものを呼んでくるという「呼び込み型の経済対策」になっている。

・大阪の成長戦略(20183月)であげられている経済活性化のための戦略の柱は、「健康」「インバウンド」「情報革命」「人材の強化」の4つで、それを実現するための方策として、当面維新がやろうとしているのが、万博・カジノ(IR)。万博は短期間のイベントなので、万博をきっかけとして、カジノ誘致で大阪経済を活性化させようというのが経済戦略の中心になっている。

・この中には成長のための5つの源泉が書かれていて、その一番目が内外の集客力強化。結局は万博・カジノによるインバウンド=外国人観光客の増加で大阪経済を発展させようとするもの。

・こういう考え方は昔からあった。大阪経済が低迷し始めた高度成長期には、大阪府や大阪財界は、大阪経済発展のためにコンビナートをつくらないといけないという考え方だった。大阪に足りない石油化学工業や鉄鋼業を誘致することが当時の大阪の経済政策だった。

・80年代には、関空誘致で大阪を世界的なネットワークの中心にしようとした。90年代に入ると、プロジェクト産業と言われる大型公共事業によって民間投資を誘発しようとした。そのあと、「パネル・ベイ」と称して、シャープの液晶工場を誘致したりした。要するに、大阪の経済政策は、その時々のリーディング産業を誘致して、経済活性化させるというものだった。それがいまでは最悪のリーディング産業としてのカジノに変わった。

② 医療福祉の削減と民営化

医療福祉の削減だけでなく、地下鉄・バス・保育所・幼稚園などなんでも民営化する。

③ 競争と自己責任

競争は、学校教育に端的に表れている。その例は、チャレンジテスト。生活保護でも自己責任が強調される。

④ ファミリー層への金銭給付

比較的若い世代をターゲットにして、金銭給付をしている。たとえば、高校授業料減免、保育料無償化など、ただにするというわかりやすい施策を子育て世代に対しておこない、ここに財源をつぎこんでいる。しかし、施策を手厚くするわけではない。保育料を無償化しても、保育の質を上げるのではない。ただにするだけ。しかも、その財源は保育所の民営化で捻出したもの。今度は、府立大学の無償化も打ち出している。

⑤ イメージ戦略と組織戦

維新は、統一地方選挙で「大阪の成長を止めるな」というスローガンを掲げたが、成長しているという根拠は何もない。「都」構想に端的な、根拠のないイメージ戦略を展開するが、同時に選挙においては、徹底した組織戦を展開する。

⑥ 強権と分断、民主主義の軽視

自分たちに歯向かうものに対しては徹底的に攻撃する。都構想の住民投票が民主主義軽視の端的なもの。

 

2.維新政治の頂点としての都構想とカジノ

*都構想の本質

・都構想は大阪成長戦略を実現させる仕組みで、前回の住民投票のときに叫んでいた二重行政の解消は最近言わなくなっている。大阪市を解体することで、開発に関する権限、財源を大阪府に集中させるのが狙いだ。

・大阪市を解体してつくられる特別区は半人前の基礎自治体で、権限が少ない。維新は、「中核市並みの権限」というが、それでは4つの中核市にすればいいのにそうせずに特別区にするのは、大阪府に権限財源に集中させるためだ。特別区にすることで、基礎自治体からまちづくりの権限を奪う。

・また、特別区は財政的に自立できない。大阪府に入ってくる財源をもう一度特別区に分け与える仕組みになっていて、どれだけ配分されるかは大阪と特別区の協議によって決まる。これが致命的問題だ。この結果、福祉施策の削減が進むことは明らか。

・いままでの区役所には窓口機能しか残らない。「二アイズベター」と言っているが、市民から行政が遠くなり、単なる行政の広域化に過ぎない。

・しかも、いったん大阪市をなくすと、特別区を市に戻す法律はないので後戻りできない。さらに、大阪市が特別区になったときには、周辺の市町村はそのまま特別区になる際は、議会の議決だけで移行できるようになる。

 

2015年、維新にとってはよもやの敗北。なぜ阻止できたのか?

・維新は負ける気はなかったが、投票率が10%以上高かった。維新支持層は常に選挙に行くが、無党派層が大阪市がなくなると困ると考え投票に行ったことが最大の敗北原因だった。しかし、住民投票以外では無党派層が棄権して、維新が勝ち続けてきた。

 

3.都構想の「バージョンアップ」で何が変わったのか

①本質は変わっていない

・都構想がカジノと直結していることが明確になり、そのための財源確保のための都構想という位置付けがはっきりしてきた。2025年には、特別区の設置、万博開催、カジノ開業を一体のものとして実現しようとしている。

・「府」を「都」に変えるための府民投票を言い出している。政府が法整備をしないとできないが、イベント的に府民投票をするかもしれない。

②公明党の意見を取り入れて迷

お互いの思惑で公明党は大阪市解体=特別区設置賛成に回った。維新は、そのために公明党の4項目を丸ごと受け入れたが、そのことにより都構想の迷走が甚だしくなった。

たとえば、公明党によるコスト削減の要求を受け入れて、新しく庁舎を作るのを減らし、区役所庁舎をそのまま使う、入りきれない職員をいまの市役所庁舎(中之島庁舎)に居候させることにした。その結果、淀川区の場合は特別区の本庁舎に84人、中之島庁舎に878人、天王寺区の場合も本庁舎152人、中之島庁舎583人というふうに、職員の大半はよその区で働いているということになった。これでは、自治体の体をなしていない。

③特別区設置でコスト増が明確に

大阪市の大きな施設は大阪府に移行させるが、コストが大阪府に移るだけ。大阪市を解体しても大都市を支えるコストがなくなるわけではない。たとえば、議会を4つ作るので、議会事務局も4つ必要。結局、職員増で33億円、ランニングストで30億円が必要となる。

④都構想は究極のリストラ

普通の財源だけでは、政令指定都市として実施してきた特別のサービスを維持できなくなる。したがって、公明党の主張を入れて10年間にわたって年20億円を特別区に渡すことにしたが、10年目以降の保障はない。協定書の中でも、10年後以降は「維持するよう努めるものとする」としか書かれていない。東京で再配分ができているのは財政的に豊かだから。東京より大阪は財源が厳しい。しかも、大阪府全体に占める大阪市の割合は東京23区より低い。政令市として独自に実施してきた施策が切り捨てられ、国基準の施策しかできなくなる可能性が高くなる。

⑤大阪府の変質

・一部事務組合を多数設置することに対する批判があり、かなり減らした。その結果、大阪府と特別区がかなりの部分を引き受けるようになった。大阪府が広域自治体の役割を放棄して、大阪市を中心としたインフラ整備や公共投資、経済対策を軸にやるようになる。

 

4.新たな大阪の展望

・前回の住民投票との変化を考える必要がある。前回は、大阪市の廃止・存続がテーマだったが、今回は都構想、万博、カジノを一体化し、「大阪の成長を止めるな」で世論を喚起しようとしている。だから、今回も都構想批判、大阪市存続だけで議論すると、維新に比べ消極的な印象を与えることになる。無党派層に働きかけるためには、都構想、カジノ批判と同時に、どのような大阪を展望していくかを訴えていく必要がある。

①大阪の経済対策

・都構想とカジノで大阪はどうなるのか?カジノで大阪経済はさらに低迷するだろう。インバウンドの消費や雇用増はプラス面と言えるかもしれないが、地域での消費はカジノに吸い上げられる。

・大阪市周辺部は雇用増やインバウンド消費はあまりないので、ほぼマイナスになる。周辺の市民がどれだけカジノに吸い上げられるかによって、大阪市がプラスになるかは決まる。

・大阪経済低迷の原因

・大手企業は儲かっているし、カジノがなくてもインバウンドは増加している。しかし、個人消費の冷え込みと中小企業の収益落ち込みが、大阪経済低迷の最大の原因になっている。カジノはそれに逆行して、ますます個人消費が減り、さらに大阪経済を悪化させるもの。

・個人消費の回復、官製ワーキングプアの是正を考えるべき。失敗続きの誘致型ではダメで、地域循環型の経済をつくっていくべき。大阪でお金を回す仕組みが必要なのに、カジノではお金が海外に出ていく。中小企業や市民消費を軸とした循環型地域経済の確立のためには、今までの蓄積に依拠して、24行政区を経済対策の主体にすべき。これくらいの規模で考えていくことが決定的。

②医療、福祉の充実

・このまま2025年になると間違いなく介護難民が発生する。維新は、経済か福祉かという対立関係でとらえているが、福祉の経済効果は、人件費が中心なので、個人消費を拡大させる。今は、福祉をきっちりやることが地域経済にとって大事。もらった給料はほとんど地元で使う、経済&福祉の両立を。福祉は市町村が決めることができる。

③学校を中心とした教育の充実

・競争、統廃合、塾ではなく、教育条件の整備が大事。いまは、わからん子がいれば塾のバウチャーを渡しているが、こんなおかしなことはない。少人数教育をやればいい。それができれば貧困の連鎖を断ち切ることができる。

④行政の地域化と日常生活圏の整備

・都構想は行政の広域化を意味する。そうではなくて、24行政区の充実が必要で、日常生活県単位に出張所を設置し、出張所で職員が地域課題の解決を図っていくことが必要。行政職員とコミュニティの協働、日常生活圏の整備、済み続けられる地域をつくっていこう。

⑤減災対策を抜本的に強化する

今さら防災的に危険な地域を作り出さない。防災的に脆弱な地域の抜本的改善を進める。日常生活圏を基本に防災対策を進める。学校の統廃合は地域の防災力を低下させる。

⑥大阪の都市格を高める

京都の企業が東京に本社を移さないのは、京都には都市格があるから。

 

5.さいごに

 

・公明党が政党として賛成で動いているため、前回と同じ運動だと負ける。「大阪市解体に反対の人」「カジノに反対の人」「都構想がよくわからない人」に対して、カジノ反対と都構想反対を一体のものとして訴えることができれば、これらの人が住民投票に行き、反対に投票すれば再び否決できる。反対だけじゃなく大阪の展望をもっと語って、無党派層を動かす運動を展開しよう。

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