今回の不正が、なぜ、雇用保険(失業=基本手当)に影響?

勤労統計調査の不正で、平均給与が上方修正されると基本手当もアップ!

・厚生労働省が「毎月勤労統計」の調査にあたり、来従業員500人以上の事業所は全数調査することになっているところ、2004年以降、東京について「全数調査」すべき1400事業所から500事業を抽出して調査していた、と報道されています。

・さらには、全数調査であるように見せかけるため、調査データを加工するようなプログラムも組まれていたようです。

・不正統計賃金は、実際の大企業の賃金平均より下回ることになると思います。では、なぜ、そのような不正が行われていたのかについては、1月28日からはじまる通常国会での追及され、明らかになっていくと思います。

 

この不正の影響が「雇用保険」「労災保険」の追加支給に及ぶことについて、簡単にまとめます。

 

①何故、影響を受けるのか、雇用保険の「基本手当」(俗に、「失業手当」と言われている)の計算方法を元に説明します。

 

②「失業保険は、退職前6カ月間の給与の額で決まるります」が、少し厳密に言うと、「雇用保険の基本給付は、退職時の「賃金日額」を元に「基本手当日額」を算出し、この「基本手当日額」×失業日数=「基本手当の総額」ということになります。

 

「賃金日額」から「基本手当日額」を計算する際には、単に「賃金日額×〇〇%」と一定の比率を掛けるのではなく、「賃金日額が安い人には高い比率(Max80%)で、高い人には低い比率で(Min50%)」計算することで、給与額の低い人の生活をより強く支える仕組みになっています。非常に高額な人や低額な人については年齢に応じてそれぞれ上限額・下限額を設定しているのです。

 

④ユニオンでは年収300万程度の会社都合解雇者の場合、「賃金日額」に2/3を掛けて概ねの「基本手当日額」を算出しています。年収の高い人は2/3より掛け率を低く、低い人は2/3より高くすることで、失職後の生活保障のバランスをとっているのです。

 

④「賃金日額」から「基本手当日額」を算出する際に、この「毎月勤労統計」の結果が影響してくると思われます。平均年収と比較して、掛け率をいくらにするか?昨年度に比べてどれだけ上昇/低下させるか?などを決定する際に、この「毎月勤労統計」の結果が使用されているのです。

 

⑤今回の不正のように、実際よりも「毎月勤労統計」の調査結果が低ければ、「基本手当日額」を算出するための掛け率が低く設定されてしまいます。結果として「賃金日額」に対する「基本手当日額」が低く出てしまうのです。(「東京新聞」表:支給されるであろう差額)

 

 

⑥今回の不正を正すために15年程度遡って調査するとしていますが、果たして現実に可能なのか注目が必要かと感じます。