外国人労働者の拡大 人権の重視や多様性の尊重などが課題

2018/10 嶌信彦氏のメルマガの人口動態

人口増から減少へ 背に腹をかえられない外国人労働者の受け入れ

・江戸時代に3,000万人強だった人口は増え続け、敗戦後の昭和20年は一時減少したが、それでも7,000万人といわれた。それが戦後の高度成長で67年には1億人に達し、現在は12,653万人まで増えている。この人口の伸びがあって日本は国力を伸ばし、日本人の勤労精神と相まって世界第2位のGDP大国にまで成長したのだ。まさに人口増こそが日本の成長の源だった。

・ところが今や人口減少、働き手不足を肌で感ずるようになり、様々な理屈をつけ外国人労働者を入れ、補っているのだ。外国人労働者の受け入れについては、10年位前までは日本人の雇用機会を奪う、治安が悪化する、などと懸念され、国民世論全体として消極的だった。しかし、ここ数年の少子高齢化の進行による各分野での労働力不足が深刻となり、贅沢を言っておられず背に腹を代えられなくなってきたのが実情のようだ。しかし、現在のやり方は、どうみてもその場しのぎの手法としかみえない。

 

過去最多の外国人250万超え

・日本の人口動態に異変が起きている。総務省の調査によると201811日時点の日本の総人口は12,5209,603人で9年連続の減少。減少幅は374,055人で1968年の調査開始以来、最大だったのである。しかも1564歳の生産年齢人口は初めて6割を切り、逆に外国人人口は過去最多の2497,656人で前年比7.5%増えている。

2018年版の人口動態では少子高齢化や一極集中現象の他、「外国人割合が過去最多」という異例のデータが出ています。都道府県別の人口増加率は東京都が首位だが、数字はわずか0.55%増、前年からは0.05%縮小している。人口減少率の最大は秋田県の1.39%だった。東京、関西、名古屋の三大都市圏の人口をみても前年比0.01%増しかなくほぼ横バイ。この三大都市圏の日本全体に占める人口の割合は12年連続で5割を超えた。地方が減り大都市圏が増えているという一極集中現象が進んでいる状況がよくわかる。

・また出生数は948,396人で1979年度の調査開始以来、最少。逆に死亡者数は134774人と過去最多で、出生数より死亡者数が多い自然減は11年連続となり、その幅も392,378人と過去最大となった。日本の少子高齢化、人口減少の実態がはっきりと浮き彫りになり、外国人人口の増加で活力を保っているともいえる。

 

求人倍率に比較して若い働き手が減少

・一方で増加しているのは外国人だ。特に若い世代が多く、20歳代は748,000人と同年代の日本の総人口の5.8%を占め、特に東京では10人に1人が外国人となっている。外国人全体では、今年11日の時点で前年比174,000人増の2497,000人となり、過去最多を更新している。

・外国人の多い市は大阪、横浜、名古屋など。ただ、増加率でみると北海道、青森、鹿児島などが前年比で50%を超している。日本で働いている外国人の国籍では中国人が全体の3割を占めるが、最近はベトナム、フィリピンなど東南アジアやネパールからの人も急増している。

・外国人が急増している最大の理由は、日本人の若い働き手が減少しているためだ。特に製造業は深刻で、ものづくりの多い中京地区は自動車や機械産業などで人手不足の解決は緊急の課題となっている。愛知県の有効求人倍率は1.98で製造業分野においては7,000人以上が不足しているという。

・また14歳以下の年少人口も15735692人に減り、全体の12.57%。遂に65歳以上の老年人口は34629,983人と年少人口の約2倍となっており、この数字をみている限り日本人の「若返り」は極めて難しく、ますます高齢化社会に突き進んでいるとみることができる。

 

留学生・技能実習生の労働現場は単純労働

・外国人の労働現場としては工場や道路工事、サービス産業などが目立っている。国籍別では中国が37万人と全体の29.1%を占める。次いでベトナムの18.8%、フィリピンの11.5%、ブラジル9.2%、ネパール5.4%などと続いている。資格別では労働現場で外国人労働者を実習生として受け入れる技能実習制度の在留資格が最も多く258,000人、留学生が26万人。また高度人材などの専門的・技術的分野も約24万人で19%近く増えている。

・日本は建て前として単純労働者の受け入れを認めていないが、技能実習の約8割は工場か建設業、留学生の過半数は卸小売りかサービス業で働いているのが実態だ。

 

・労働人口減少を補う対応として外国人労働者の雇用だけでなく、日本人女性や高齢者の雇用も増えている。どのケースも減少する日本人労働者の補完としてみるだけでなく、賃金や権利、教育、日本人労働者とのバランスなどを国として考えておくべき時代に来ていると思う。グローバル化となり、これまで以上に人権の重視や多様性の尊重などが重要視されてきた。敬意を表される国になりたいものだ。(嶌信彦氏のメルマガを人口動態を中心に再編集)