小林よしのりさんらが「共謀罪」(テロ等準備罪)法案反対の記者会見

2017/4/27 参院議員会館で田原総一朗さんや小林よしのりさんらジャーナリストや作家ら14人が会見

■小林よしのりさんの発言

 この共謀罪法案は、国民世論で見ると、賛成のほうがパーセンテージが高くなってしまう。ここのところを突破しなければどうにもならないところがあるんですよ。だいたい共謀罪に反対と言っている人は左翼だと、そういう認識になってしまっているんですね。保守がこれに反対するはずがない、と思われてしまっている。
 一般の人、90%以上の人が、「自分は一生テロとかそんなことやるはずもないから、関係ない。そういうことをやる人がいるのだったらさっさと捕まえればいい」としか思っていないですよ。だから、関心がないということになります。
 けれども、ワシは国会に参考人招致で呼ばれて話しましたが、国会の人数構成は自民党の人のほうが多い。ワシは自民党の議員から見たら左翼と思われていないので真剣に聞いてくれるんですよ。それはやっぱり、どちらかというと右の方向からワシが共謀罪の危険性を訴えたからなんですね。
 普段はほとんど90%以上の人がモノ言わぬ市民として暮らしています。それで一生終えますよ。けれども何かあった時は、たとえばワシが関わった薬害エイズ事件では子どもが非加熱製剤入りの注射を打たれてしまった。いわば無差別テロのようなことをされてしまったわけですよね。
 そういう時は権力と闘わなきゃいけなくなるんですよ。モノ言わぬ市民のはずが、被害を被った時は、モノ言う市民に変わるんです。こういう時のことを一般の普通の市民が想像できるかどうか。ここにかかっているんです
このことをマスコミの人たちがちゃんと伝えてほしい。誰でもモノ言わねばならない市民に変わってしまいますよ、と。
 団体もそうですよ。ワシは薬害エイズ訴訟を支える会の代表でしたが、この代表がテレビで「天誅!」とかって出すと、その時点でこの団体が「変質した」「変容した」と公安から見られますよね。そしたら、ワシが監視対象になってしまう。通信傍受されてしまったりするわけでしょ。
 でも、そういう切羽詰まった、自分や子どもたちの被害のためにはラジカルに闘おうと一般の人が思うときも来るんです。そういう人のことを考えないと、民主主義というのは成立しませんよ、と言っているんです。マイノリティの、権力の被害者になる人だっている。その人たちをどうやって救うか、ということを考えないと、民主主義は健全に機能しませんよ、と。
 国会でこういう話をしたら、自民党の議員は誰一人首を横に振る人はいませんでした。「うんうん」とうなずいていましたよ。だから、もっとマスコミの人たちが啓蒙して欲しい。「自分たちは関係ない」とみんな思っているかもしれんけど、あなたの子どもがどんな目に合うか分からないのだから、そういう時にちゃんと救えるようにしておかないといけない。権力が恣意的な形で「こいつらはテロ集団に変質した、だから監視してもいい」と、権力にとってマズければそれはやれるんですから。そういう世の中にするとマズいですよってことをワシは訴えたわけだけれども、マスコミの人たちも、そこをもっと啓蒙して国民に分かるように伝えて欲しいと思います。
  

 

岸井成格さんの発言

 これまでの国会審議を聞けば聞くほど、そして取材を続ければ続けるほど、この法案はテロ対策とは関係なく、あの3回廃案になった共謀罪を、名前だけを変えてもう一回生き返らせようとしている意図がはっきりしてい

 

ます。
 最初は、この国会でどうしてもという感じではなかったらしい。通すのはなかなか難しいだろうとされていたのを、「テロ対策」とすればいけるんじゃないか、となってから、バタバタとこの国会に持って来た。もともと自民党に最初に説明した原案では、「テロ」の「テ」の字もなかった。そういう法案なんです。
 もう一つの問題は、「テロ等」と「等」という文字が入っています。700近かったものを277にしたようですが、何を根拠にどういうものが犯罪対象となるかと決めたのか。大臣は何と言ったかというと、「そんな基準はありません」と国会答弁で言いました。
そもそも大臣の答弁が本当に二転三転。よく聞いていても、この人、本当に分かっていないな、と。最近、金田大臣を評価する皮肉な声がある。こんなデタラメな法案まともに答えられるわけがない。だから、大臣としては答えられない。非常に正直なんじゃないか、と。無理やりテロに持って行かなきゃいけないから大臣も答えられない。
 国会では野党の合意なしに与党の多数で押し切って刑事局長を同席させて、しかもほとんど大臣よりは刑事局長が答え、それをそのままおうむ返しに大臣が喋っている。本当にみっともない国会審議をやっています。こんなことが許されるのか。これを数の力で押し通してしまうなんて、考えられないですよね。
 既に日本弁護士連合会、日本ペンクラブなど多くの団体が反対を表明し、廃案に向けて頑張ろう、ということを決めています。それは我々の気持ちと全く同じです。こんなものを通してはえらいことになります。
 もう一点あえて申し上げると、私たちはずっと何回かこういった会を持ちました。特定秘密保護法がそうでした。集団的自衛権の閣議決定がそうでした。安保法制もそうです。そして前回は電波停止発言。放送法違反ということで高市大臣がどういう発言をしたか、大問題ですよ、これは。憲法違反の発言です。そして、今言った一連の流れというのがどうもここへ来て、安倍政権4年間のアメリカとの一体化ですね。安保法制、集団的自衛権その他全部連動している。そこに秘密保護法や共謀罪というものが一体のものとして出てきている。そういう視点での追及も必要ではないか、そう思います。