無知につけ込む安バイト 高校生アンケート

毎日新聞2017年1月10日

高校生の皆さん、給与が最低賃金を下回った場合は労働者が使用者に差額を請求できることを知っていますか。

・ 毎日新聞が全国の19高校の生徒にアンケートしたところ、約6割が知らないと答え、最低賃金が毎年秋に改定されることも7割以上が知らなかった。厚生労働省調査(2015~16年)でアルバイト経験のある高校生は46%に上るが、最低賃金制度の知識がないまま働く若者が多い実態が浮かんだ。

・ 昨年9~11月、今年度のNIE(教育に新聞を)実践指定校から定時制を含む19校を選んで調査した。所在地は、北海道▽岩手▽栃木▽埼玉▽千葉▽東京▽神奈川▽新潟▽愛知▽三重▽滋賀▽京都▽大阪▽兵庫▽広島▽愛媛▽福岡▽熊本。1~4年生1268人(男561人、女707人)から回答を得た。このうち、472人にバイト経験があった。

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・ 最低賃金制度の認識を問うと、79%が「知っている」と回答。金額が都道府県ごとに決められていることを知っているのは59%だった。バイト経験者に限ると、それぞれ92%と77%に高まった。

・ ところが、制度の詳細を問うと、認知度は低下。給与が最低賃金を下回った場合に差額を請求できることは64%、金額が毎年秋に改定されていることは76%が「知らない」と答えた。バイト経験者でもそれぞれ55%と57%が知らなかった。

・ バイト経験者で給与と最低賃金の額を比べたことがある人は44%にとどまり、勤務地の最低賃金額を2割が知らなかった。

・ また、バイト経験者の3%は「最低賃金未満の給与で働いたことがある」と答えた。研修中や見習い期間を理由に正規の時給より低くされたという回答もあったが、最低賃金法はこうした減額も一部の例外を除いて禁じている。

・ 岩手の女子生徒(3年)は「最低賃金が695円なのに時給は615円だった」、京都の女子生徒(2年)は「時給700円と言われて安いと思ったが、初めてのバイトだったので納得していた」と回答した。【小林慎、原田啓之】

バイトも労働者

 

 本田由紀・東京大教授(教育社会学)の話 アルバイトをしている人ほど知る割合が高いことが目を引いた。高校生バイトは生徒であり、労働者でもある。こうした二重の立場を教材とし、リアルな形で労働法を教えていくべきだ。知識を丸のみさせるだけでは、すぐに忘れられてしまう。労働法は働き手にとって切実なものであること、職場でおかしなことがあれば専門機関にどんどん相談して構わないことを伝えることが必要だ。