「正社員に道開く」はうそ!  労働者派遣法「改正」の問題点

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 昨年秋、「正社員への道が開かれる」と、塩崎恭久厚生労働相が強調した労働者派遣法「改正」案。法案にはそんなことはどこにも書かれていない。うそをつかなければならないような法案はそもそも出すべきではないだろう。

 改正案は雇用期間の定めの有無で規制の仕方を分けている。今回有期雇用の派遣について雇用安定措置を初めて設けたというが、正社員化ではない。しかも実効性を欠いている。

 同じ業務に3年間派遣する見込みのある有期雇用の場合、派遣会社は、派遣先に直接雇用をするよう求めることなどを義務づけているが、断られればそれまで。1年以上3年未満については全く効力のない努力義務。1年未満はそれさえもない。派遣会社による派遣以外の無期雇用の提供も多くの雇用を吸収できるはずがない。

 派遣先に対する正社員求人の情報提供義務は、情報を出せばいいだけで雇う義務まではない。


【似て非なるもの】

 一方、無期雇用の派遣は期間制限をなくす。だが、これも「正社員」と言えるようなものではない。

 一時金や退職金、一定の昇給制度がある「正社員」ではないケースも多く、解雇も比較的容易だ。2008年末の世界同時不況時には、派遣会社に雇われて雇用が安定しているはずの常用型派遣労働者も、仕事がある時にだけ雇う登録型と同じような割合で解雇されていた。

 常用型派遣で働く、あるシステムエンジニアの男性は5年前、勤務していた派遣先がなくなった。法律どおり賃金の6割の休業補償が支払われたが、やがて社長から「不良在庫」「返品」とののしられるようになった。

 全国一般東京東部労組に加入すると、社長は派遣先があるのに「ない」とうそをつき、仕事を与えなくなった。解雇や退職に追い込もうとしたとみられるが、社長のうそが発覚、組合の支援もあり今も働いている。その後、派遣会社で組合員拡大に取り組むが、同僚らは派遣先がばらばらなため難航している。

 解雇が容易、団結権が保障されにくい――など、男性が受けた苦難は、雇用者と使用者が異なる間接雇用だからこそのもの。世間一般でいう「正社員」とは似て非なるものだ。

 

【本質を隠す方便】

 今回の法改正の最大の狙いは、企業が、業務内容にとらわれず、いつまでも派遣を利用でき、いつでも切れるようにすること。「正社員に道を開く」と言うのはこの本質を覆い隠すための方便だ。うそをつかないと通せないような法案は廃案にしなければならない


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コメント: 1
  • #1

    名無し派遣 (火曜日, 19 5月 2015 13:07)

    派遣でいまの派遣先でもう7年が経過、介護ほど重くはないかもしれませんが、親の面倒を見ている部分もあり転職もままならず、、、
    10月をある程度は楽しみにしていただけに本当にこの改悪が心配です。