新し労働者派遣法「改正」、政府・与党6月第1週に強行採決か!

2015/6/2 毎日新聞朝刊 / 2015/6/1コミュニティユニオン全国ネット通信

【毎日新聞】

・今国会に提出されている労働者派遣法改正案の審議が衆議院で大詰めを迎える中、これまで働く期間に制限がなかった通訳など専門26業務の派遣労働者に雇用不安が広がっている。

・改正案は専門26業務を廃止し、受け入れ期限を一律最長3年にする内容だが、法案成立前の今、3年後の雇い止めを言い渡されたと訴える26業務の派遣労働者が相次いでいる。

・専門26業務の派遣労働者は専門性を生かして同じ会社で長期間働いてきた人も多く、厚生労働省の推計ではそうした派遣労働者は約13万人いる。しかし、法改正されれば3年後に同じ職場にはいられなくなる。

・貿易関連の会社で事務機器操作の専門業務を15年間続けてきた東京都在住の女性(56)は5月下旬、派遣先の社長に「次はない」と3年後の雇い止めを通告されたという。女性は「15年も働いてきたのに、言われた時は体中の力が抜けた」と話した。年齢的に新たな派遣先の紹介を受けるのは難しいといい、先は全く見通せない。

・改正案は、派遣先が正社員雇用するよう派遣会社から申し入れることや、派遣会社が無期雇用として採用するなどの雇用安定措置も義務付けている。

・だが17年間、関東の同じ派遣先で設計・開発の専門業務をしてきた50代の男性は派遣先から「正社員にするのは年齢的に難しい」と言われ、派遣会社からは「我が社での無期雇用は無理」と言われたという。男性は「3年後に失職するのは間違いない。50代で新たな雇用を一から探せというのか。法改正を考え直してほしい」と話した。

・都内のパソコンインストラクターの40代女性は「26業務で長く働けると思い技術を磨いたのに、これまでの努力が無になる」と不満を漏らした。


【CUNN全国ネット通信】

・審議が始まったばかりの派遣法「改正」案を採決に持ち込もうという動きがちらつき始めた。衆院で過半数を占める与党側は、6月3日(水)か5日(金)の厚生労働委員会で強行採決を狙っているのではないかといわれている。
・厚生労働省の担当課が企業寄りのスタンスで作成した「10・1虚偽ペーパー」の問題で、野党側は「審議の前提が崩れている」と反発。これまでは厚生労働委員長の職権で委員会が開催されてきた。職業安定局長による不誠実な答弁もあり、22日の委員会は流れたものの、一連の「10・1虚偽ペーパー」の問題で塩崎恭久厚労大臣が謝罪文書を提出したことで、27日の委員会から野党側も合意の上で正式な審議が始まった。

・大臣の謝罪文書には「不適切な表現」や「議員によって異なる資料を用いること」について「深く反省し、真摯にお詫び」するとの記載はあるものの、記載内容の問題点には言及していない。 27日の厚労委員会で野党側は「謝罪文は不十分だ」と反発。「労働者が故意に違法派遣を行う」などの記載がある点について、「派遣労働者の人権や存在そのものを冒涜するもの。大臣が改めて記者会見などの場で謝罪すべき」と要求した。

・大臣が2月時点でペーパーの存在を知りながら、その後十分な対応を怠った問題に関しては「厚労省の組織的・構造的問題だ」と批判した。

・今回の「改正」案に対し、野党側は「欠陥法案だ」と批判を強めている。専門26業務の撤廃で、これまで期間制限なく働いてきた有期雇用の労働者40万人以上が、3年後に失職することが確実になるためだ。

・企業寄りの厚労省の姿勢は変わらず、法案内容の問題点解明もまだまだこれから。そんな状況にもかかわらず、委員会関係者によると与党側は来週にも強行採決を狙っているという。派遣労働者を冒とくする厚労省と、議会制民主主義を軽視する政府与党により、労働者不在の法律が強行されようとしている。