工事費未払いは万博に関わる働く人びとへの人権侵害万博協会には人権を尊重する責任があるとするOECD 責任ある企業行動に関する多国籍企業指針の対象だ (サポセン通信NO55より)

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 「人権方針」より
・公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(以下、「博覧会協会」という)は、2025年日本国際博覧会 (以下、「大阪・関西万博」という)のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」が実現されるために、大阪・関西万博に関わる一人一人の人権が尊重される必要性があることを認識し、2030年をゴールとする「持続可能な開発目標」(SDGs)を達成すべく、博覧会事業に携わるすべての人の人権を尊重します。
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 「持続可能性に配慮した調達コード(第3版)」より
4.6 賃金
・サプライヤー等は、調達物品等の製造・流通等に従事する労働者に対して、法令で定める最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
・サプライヤー等は、労働の価値に見合った、生活に必要なものを賄うことのできる水準の賃金の支払いに配慮すべきである。
※サポセン解説 サプライヤー等とは サプライヤー(商品、サービスの供給者)パビリオン運営主体等及びサプライチェーンをはじめとする関係者を示す
サポセン 労働弁護士 事業者 万博協会と話し合う
・日本国際博覧会協会は「国連 ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく「人権方針」や「持続可能性に配慮した調達コード」を定めて博覧会事業に携わるすべての人の人権尊重やサプライヤー等の賃金支払いの配慮を掲げている。
・しかし海外パビリビオンの建設が遅れに遅れて万博開催に合わないとされた困難の中で、アンゴラ マルタ ドイツ セルビア ルーマニア 中国 アメリカのパビリオンの建設工事に携わった下請け中小事業者が元請け事業者や上位請負事業者から工事費未払いを受けたことで「労働を提供してもその対価が支払われないという深刻な人権侵害問題」が生じている。
NPO労働と人権サポートセンター・大阪(「サポセン」)は、6月に万博の海外パビリオンの工事費未払い被害の事業者でつくる「万博工事未払い被害者の会」の代表よりアンゴラパビリオンの未払いの件について相談を受けた。
・サポセンは大阪労働者弁護団の弁護士と相談し、万博協会への申入れと話合いを求めていくことを確認し、サポセン代表理事の在間秀和弁護士と大阪労働者弁護団の村角明彦弁護士、藤原航弁護士及びアンゴラパビリオン工事下請け事業者は連名で公開質問書(サポセン通信54号掲載)を作成し、7月15日に万博協会を訪れて質問書を提出し趣旨を説明した。そして同月22日に届いた万博協会からの回答を踏まえ、28日に再質問書を提出した。
8月4日に万博協会から再質問書への回答示し国際局担当局長と施設維持管理局担当局長が出席して第2回目の話し合いを行った。弁護士は「ビジネスと人権」「タイプXに関わる規制権限」「建築業法にかかわる問題」の観点で追及した。万博協会のガイドラインが遵守されていないことが問題であり、万博協会の人権方針では万博事業などによって人権への負の影響を引き起こした場合には、その救済や是正に取り組むとしている。方針をつくるだけでなく、それに沿って実際に行動したのか、未払いがあった事実を認識しているか、その問題を調査したのか、救済措置を検討したのかについて質した建設業の許可には、財産、下請けに払える体力があるかどうかの条件がある。万博協会がアンゴラパビリオンの工事に関して「建設業の許可がない、違反業者が工事に入ってしまったこと」を見抜けず、管理監督が出来なかった点が不払い問題を生じさせた協会の責任があるのではないかと指摘した。
万博協会は工事費不払い問題の責任について法的根拠はないとしたが、請負で働いている労働者の長時間労働や建設許可を得ていない下請け業者の問題については放置できない立場から、今後の解体工事も含めて再発を防止するために前向きに考え、今後とも話し合いを行う見解を示した。
・また、万博協会は話し合いの中で「被害者の会の代表」でアンゴラパビリオン工事下請け事業者から万博下請け工事に関わってきた思いや気持ちを聞き取り、「気の毒に思う」と言う言い方であったが万博協会としても何らかの措置を取りたいと言う意向を示し、万博協会として国・経産省および大阪府に対して、いわゆる立て替え払いについての強い要望があったことを伝えるという言質を得た。
サポセンと弁護士3名は8月5日、大阪府庁内で記者会見を開催して万博協会からの回答書と話し合いの内容を報道機関に伝えた。
・8月25日万博覧会協会との話し合いの窓口である持続可能性局より「8月4日の話し合いの内容については、話し合い終了後、直ちに経済産業省及び大阪府に報告しました。その際、話し合いの場に出席した当協会の担当者から、経済産業省及び大阪府に働きかけるとお話しました通り、経済産業省及び大阪府に対して、アンゴラ案件を含め個別の事案について、できる限りの対応を頂くよう、お願いしました。経済産業省及び大阪府においては、当協会からの働きかけを踏まえて、対応して頂いているところです。」とのメールがサポセンまで送られている。
万博協会 企業には人権を尊重する責任があるとするOECD 責任ある企業行動に関する多国籍企業指針の対象
・サボセンは工事費未払の立て替え払いの道義的責任及び解体作業における法令遵守について確約を取るために万博協会との話し合いを継続する。また「企業には人権を尊重する責任がある」とする「OECD責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針」を活用して、対象事業者(企業)である万博協会と「行動指針」に関する問題解決支援のための設置機関である日本NCP(NationalContact Point・経産省・厚労省・外務省で構成)への働きかけを準備していく。
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