11.28 育休→契約社員化→雇止め事件 東京高裁不当判決に対する抗議声明/女性ユニオン東京

2019/12/25   CUNNメール通信N0.1634 転載

「育休切り手法に裁判所がお墨付き?!」東京高裁が、雇止め無効とした一審判決を逆転  

●マタハラを裏づける録音を取ろうものなら、雇止めしてもOK?
●会社から相次いで起こされた裁判、記者会見で声を挙げたら名誉棄損?
●マタハラだけじゃない。働く者すべての手足を奪う不当訴訟。今こそ声をあげよう。

●これは週5復帰前提の「つなぎの制度」。それを信じ週3で復帰した女性に対し、会社は週5に戻すのを拒み続け、ついに雇止めにした。
●2019年11月28日、東京高裁にて阿部潤裁判長は、雇止め有効!録音は会社への背信行為!会社への名誉毀損として無職になった母親に55万円の支払いを命じた。



2019年12月20日

東京高等裁判所での逆転不当判決に対する抗議声明

女性ユニオン東京執行委員長 井出 志保


 2019年11月28日、組合員原告が正社員の地位確認を求めて闘ってきた裁判(マタニティハラスメント裁判)で、東京高等裁判所阿部潤裁判長は、正社員の地位は認めない、雇止めは有効、提訴記者会見は名誉棄損として55万円の損害賠償の支払いを命じるという、原告の請求をほぼ全面的に棄却する、到底許せない不当判決を言い渡した。
 原告は、育休復帰時に正社員のみを対象とした契約社員制度(契約社員は、本人が希望する場合は正社員への契約再変更が前提)に則って、契約社員として復帰した。その後、正社員復帰の希望を出すが会社が復帰を先送りしたために、会社に制度履行を求め続けたところ、会社は1年後に雇止めをした。その上、まだ雇用関係が存在している間に会社は、「地位不存在確認」の裁判を提起するという暴挙に出たのである。その後、原告も提訴した。
 正社員の地位を認めない判決は、育休復帰時に会社がメリットのみの説明で非正規雇用へと誘導し、雇止めするという手法に裁判所がお墨付きを与えるに等しい。また、保育のバックアップ体制の証明を求めたり、その判断を会社が行うことを許容するなど、妊娠・出産・育休を理由とした不利益取り扱いを禁じている男女雇用機会均等法や育児介護休業法の主旨に反するものと言わざるを得ない。

 この不当判決では、女性労働者は出産育児でキャリアをリセットさせられ、子どもを持っても安心して働き続けることができなくなる!!

 地裁判決は、原告に対する会社の嫌がらせを不法行為と認定し雇止めを無効としたが、高裁判決は雇止めを有効とし、原告が会社の禁止命令に従わず、執務室内での録音をしたことをその理由としている。職場のハラスメントが大きな社会問題になっている今日、労働者がハラスメントを立証できるものが録音である。

 会社が強権的な姿勢にある職場においては、孤立させられる労働者が自己を守るために録音はまさに命綱なのである。こうした労働者の自己防衛の手段を禁じれば雇止め理由にできるとする高裁判決は、労働者の声を封じるに等しい。おりしもハラスメントの防止指針について労働政策審議会で検討中というこの時期に、この高裁判決は、安倍政権が労働者の声を封印する施策を先取りした不当極まりないものである。

 加えて、会社の態度を改めさせたいという強い思いから、原告は面談時の実情をメディアに訴えたことに対して、高裁判決は、原告が会社をマタニティハラスメント企業の印象を与えるためにマスコミ等外部関係者らに対して事実と異なる情報提供をして、会社の名誉、信用を毀損し、会社との信頼関係を破壊する行為に終始したことは、雇止め理由に相当すると判じた。そもそもメディアは国民の知る権利を保障する機関として、国民の関心事たりうる社会事象を取り上げ、報道することを使命としており、可視化されにくい職場の実情を労働者からの情報提供によって報道し問題提起するという重要な役割を果たしていることを無視した判決である。

 その上、提訴時の記者会見で述べた内容について、判決は名誉棄損が成立するとして原告に損害賠償支払いを命じた。提訴時記者会見は、記者クラブで頻繁に行われ、提訴した事実とその主張を記者に伝えるものであり、原告の心情を表現したことをあげつらい、労働者に損害賠償の支払いを命じることは、労働者は声をあげるなと言うに等しい。

 高裁判決は、一原告労働者に対する攻撃にとどまらず、労働者が声をあげること、権利主張することに対する攻撃であり、社会的に訴えることへの制裁と言えるものだ。

 こうした高裁判決を許してはならない。原告は「新たな闘いのスタート」と最高裁に上告及び上告受理申出を行った。女性労働者が出産しても安心して働き続けられる社会の実現を目指して労働者が声をあげ、司法が労働者のおかれた状況を理解し、正しく判断することを期待し、私たちは最後まで闘い続ける決意である。多くの仲間の皆さん、共に!