自販機補充「ルートドライバー」過酷 実態知って、労組結成

2018/12/28 京都新聞 (なかまユニオンからの情報提供)

・各業界で「働き方改革」が進む中、飲料自動販売機の商品を補充する「ルートドライバー」たちが、労働環境の改善を求めて動き始めた。国内の飲料自販機の設置台数は約244万台。24時間稼働する自販機を維持するには多くの人手が必要で、業界には長時間労働が蔓延(まんえん)している。京都でも一部のルートドライバーが労働組合を結成し、声を上げ始めた。

岡一徳さん(39)=京都市伏見区=は、近畿圏で事業を展開する準大手の京都支店に勤務して8年になる。トラックで巡回を始めるのはまだ暗い午前6時。城陽市や久御山町などに設置されている約170台を担当し、1日30台を目標に商品補充のほか、売上金の回収、「冷」「温」の切り替え、空き缶回収などを黙々とこなす。

「京都市中心部は効率よく回れるが、郊外はそうはいかない」。90分の休憩時間はあるとされるが、「休むと業務はこなせない」。昼食は抜き、同僚は運転しながらおにぎりをかじっている。所定勤務時間の午後3時15分を過ぎても作業は終わらない。巡回は午後5~6時ごろまで続き、1日で補充するのは計3千本ほど。帰社してからも翌日に向けた商品の積み込みなどがあり、同7時ごろに帰宅する毎日だ。

給与は基本給が低く、売り上げ手当で変動する。休みたくても、生活のためには休めない。自販機の故障で苦情電話に対応することも。仕事のきつさに離職する人は多く、岡さんは「マンパワーで成り立つ業界なので、もっと人を大事にする会社になってほしい」と、8月に仲間7人と労組を立ち上げた。

会社側と団体交渉を行う中で、残業や休日労働に関する労使協定(三六協定)で、選出した覚えのない人物が労働者側の代表となった書類を会社側が労働基準監督署に提出していたことが発覚した。「違法な労使協定書に基づき働かされていた」

自販機の販売データと実際に回収した売上金に過不足が出た場合、社員が自腹を切る仕組みについても声を上げた。「原因が不明なのに一方的に弁償させられるのはおかしい」。組合員のうち、岡さんを含む3人が過去2年間に徴収された計1万3550円~4万8040円の返還を求めたが、会社側は拒否し、今後もこの慣行を継続することを文書で告げてきた。

岡さんは「会社に自浄作用はない。社会に問題を提起したい」として、11月に京都南労働基準監督署に改善指導を行うよう申し立てた。自販機業界の労働問題に詳しい塩見卓也弁護士(京都弁護士会)は「通常業務で生じうるミスから生じた損害を賠償する責任は労働者側にはない。不足金の支払いを負担させるのは違法の可能性が高い」と指摘する。会社側は取材に対し、「話すことはない」としている。

自販機事業の労働に関しては各地で問題が明るみになっている。大手の「ジャパンビバレッジ東京」の支店長が部下に「有給チャンス」と称し、クイズに全問正解すれば有給休暇を取得できるとするメールを送っていたことが8月に社会問題化した。同業で働く人から、未払い残業代や長時間労働などについて、個人で加入できる労働組合への相談が増加している。

相談を受ける「ブラック企業ユニオン」(東京都)の担当者は「大手飲料メーカーの売り上げに占める自販機の割合は大きく、過当競争が過酷な労働環境につながっている」とし、自販機のルートドライバーに特化した組合の結成も準備しているという。

厚生労働省労働基準局監督課は「自販機業界の労働に関する報道があったのは認識している。法令違反があれば情報に基づき対処していく」としている。