HW雇い止め裁判 最高裁上告受理申立の不受理に対する弁護団見解(2016/10/24)

2016/11/3 第4回管製ワーキングプア―大阪集会で裁判の不当性を訴える時任玲子さん

ハローワーク非常勤職員であった時任玲子さんの裁判は、有期雇用であるとの理由のみでもって合理的理由もなく雇い止めをされたことに対し、これは「働き続けることへの期待権」を損なう不法行為であるとして、国に対し損害賠償請求を求めるものでした。

第1審の大阪地方裁判所は、昨年(2015年)529日、「(原告は)任用予定期間経過後に再び任用されることを期待する法的利益を有しない」、「非常勤職員である相談員の任用行為は公法上の行為であり、法令に定められた任用方法の例外を認める余地はない」として、時任さんの請求を棄却しました。時任さんが従事していた実際の業務は正規職員と実質的に異ならないことを直視せず、「任用が継続されると期待することが無理からぬ物と認められる特別の事情」があるかどうか、という、今から20年以上前の大阪大学事件の最高裁判決の枠組みをそのまま踏襲した内容でした。

控訴審の2015年11月25日の判決も第1審と内容は変わらず、さらに最高裁へ上告受理申立を行いましたが、本年(2016年)9月29日付けで、最高裁は、本件を上告審として受理しないとの決定を出しました。残念ながら、こうして時任さんの裁判は敗訴が確定しました。

公務労働は民間と違い、あくまでも採用するか否かは国が一方的に決める任用行為なのだから任用の継続を期待するのは法的保護に値する利益ではないという裁判所の考え方は根強く、今回もその考え方が変更されるには至りませんでした。大変残念に思います。

 

求職者に職業を紹介し、安定した雇用につなげる役割を担うハローワークにおいても、本来は正規職として配置されるべきところに非正規職の人が配置されて正規職員と同じ業務を行っており、期間が満了したとの理由でもって簡単に雇止めされているという実態があります。

 

非正規で働く人の割合は公務職場でもますます増え、そして、正規職員と同じ内容の仕事をしているにもかかわらず、「再任用を期待する根拠はない」として、裁判所は繰り返し非正規労働者を敗訴させる判決を出し続けています。 真面目に働き、その働きで生計を立てている人がいとも簡単に切り捨てられることを、人権の最後の砦であるはずの司法が放置する結果となっています。

同様の裁判は次々提起されています。社会問題として注目されてきつつもあります。

時任さんの裁判は敗訴という結果におわりましたが、今後も司法や社会にこの実態を訴え、まじめな人が安心して働き続けられる日が来るまで、粘り強い運動が必要だと感じています。

勝訴の見込みの厳しい事件であるにもかかわらず、少しでも多くの非正規労働に従事する人の地位の安定と労働条件向上を願って、手弁当で時間も労力も惜しまず支援をしてくださいました皆様方、本当にお世話になりました。

 

ここに結果のご報告を致しますとともに、長きにわたり裁判にご協力くださいましたことに厚く御礼申しあげます。

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コメント: 1
  • #1

    山下けいき (日曜日, 06 11月 2016 17:22)

    負けても負けてもあきらめない。あきらめない人が増えることで流れは変わります。